このような国防最高統帥部を会議形態で構成するのは、ソ連が元祖だと言える。ソ連は、国防会議−軍事会議−国防省−参謀本部式の垂直的構造を有している。国防会議(Defence
Council)は、共産党書記長、人民委員会議長、国防相、KGB議長、参謀総長等が参与し、又は政治局員が委員となることもある。軍事会議は、国防会議とは異なり、軍関連者で構成され、国防相、参謀総長の外、国防第一次官、政治総局長等も参与する。戦時になれば、国防会議の機能が拡大され、軍事会議を基盤に最高司令部(STAVKA)が創設され、参謀本部は、最高司令部の実務執行部署となる。即ち、戦時には、国防会議−参謀本部体制となる(具体的な参席人員と名称に対しては、資料毎に少しずつ偏差がある。)。
中国は、共産党中央軍事委員会(党中央軍委)が人民解放軍の最高統帥部の役割を遂行してきたが、1982年には、国家中央軍事委員会(国家中央軍委)を創設した後、最近では、国家中央軍委をより重視している。勿論、両委員会のメンバーは、ほぼ一致することから、実質的な変化というよりは、党に対する国家優位を象徴的に見せている措置である。国家中央軍委直属として総参謀部、総政治局、総後勤部が設置されている。政務院(行政部)の国防部は、総参謀部と水平的関係である。
北朝鮮の場合には、このような会議体機構として労働党中央軍事委員会が存在してきたが、この機構が実質的な軍事統帥系統上にあったのではなく、国家主席−人民武力部−総参謀部で構成されるラインにより軍事問題を処理してきた。90年代以降、党機構ではなく、国家機構である国防委員会の位相が強化され、国防委員会−人民武力部−総参謀部で構成される新しい指揮系統を形成した。北朝鮮の最高統帥部は、ちょっと見れば、ソ連や中国と似たように見えても、細部的には、ソ連、中国の制度とは若干差異点があることが分かる。最近、人民武力部を改編し、人民武力部の位相を多少弱化したような徴候がある。これは、中国式制度に少し近接した形態だと言える。
最終更新日:2003/05/21